「………それって、美佳…?」

恐る恐る尋ねると、聖はバッと私を射ぬくように見た。

「何で知ってるの?」



…聖はさっきのこと、覚えてないの?
私を間違えて呼んでたこと。


「…美佳はね」

ふわっと、柔らかく聖が笑った。
それだけでどれだけ聖が相手を好きか見てとれる。


「俺を救ってくれたんだ。
バカで強情で意地っぱりでワガママで。

サイコーに優しいんだ」


「…………聖」


「絶望の中、レンタル彼氏をしてたけど、美佳に会って救われた。
美佳がいたから、伊織が不倫相手の息子だって分かっても、復讐をやめようと思ったんだ」


「…………じゃあ…何で」


「伊織の所為でレンタル彼氏はなくなったんだ」


「……え?」


「……伊織の客が通報して、社長とか美佳が捕まった。
俺らは話をしただけで、ほとんどお咎めなし。
びっくりしちゃうでしょ」


「………そんなことがあったんだ」


「唯一の救いだった美佳も失って。
金も住む場所もなくなったんだ。
その時に伊織に復讐することを誓った」


「……………」



何も、言えない。