レンタル彼氏 Ⅱ【完結】

声のした方は、光が眩しくて。
何も見えない。


誰か、立ってることしかわからない。


だけど。


誰だかわかる。



「……泣いて、ないよ」



そう。
手で頬を触るけど、やっぱり泣いてなんかいない。


「ううん、泣いてる」


その光はどんどん近付いてきて。



目の前まで来ると、腕を伸ばす。


俺の胸を、人差し指でトンと突いた。



「…………ここ」


「……え?」



まばゆくて。

顔が見えない。


余りにも眩しくて目を細める。



「…伊織の心が泣いてるの。
ずっと。ずっと」



目を細めた先に見える。
眉を下げて、悲しそうに微笑む君を俺は知ってる。



「………………い、ず、み」



ポタポタと。


何度も何度も何度も何度も。



涙が俺の頬を伝って落ちる。




「………泣かないで」



誰の所為で、泣いてると思ってんだよ。




聖と、付き合って。

俺を忘れたのは、泉じゃないか。