俊也はコンビニで求人案内と日用品を買い、電気屋で安物の洗濯機とアイロンと冷凍庫が付いていない冷凍庫と18インチのテレビを買い、布団屋で一番安い布団を買った。


全部を終えて自宅に着いたのは夜中の8時だった。


『電化製品が家に届くのは明後日くらいか…。それまでに…。』


おもむろに通帳を開く。残高58万2000円。
あれだけあった金がもう半分近くになってしまった。まだ大阪にきてから2日しか経っていないというのに。


着ていたジャケットの胸ポケットからMDと繋げたイヤホンを取り出し耳に付ける。

シャン♪
シャン♪
シャン♪


boloidを聴きながら
求人案内の折り目をつけたページを開ける。


レンタル屋のレジ。朝昼時給850円。夜間は950円。労働内容は商品の整理とレジ担当…か。


イヤホンを片耳取り外し、番号を押して電話をかけた。


プルルルル。プルルルル…



その時だった。



ピーンポーン。


空虚な部屋に響いた
一つのインターホン。




『…ガチャ。はいこちらGELO八尾支店……プツッ』


『あっ!!』

俊也はインターホンにびっくりして電話をきってしまった。



『誰なぁこんな時間に。』



その時頭によぎったのは親父の台詞。
『セールスとかの悪徳業者には騙されるなよ。』

さっそくか…こんな夜中に来やがって。
俊也は重い腰をゆっくり上げて玄関に向かった。


『あ゛ーい。』