「これ、痛くねぇ?」
暁に、私の手首を顔の近くまで持ち上げられた。
それによって……ひじの近くに、うっすらと青紫のあざができていることを今、初めて知った。
きっと、さっきの男に腕を掴まれたときにあざがついたんだろう。
「不思議と痛くないから大丈夫だよ」
「……そうか」
「うん。心配してくれてありがとう」
今日1日で、こんなに見た目が怖い暁が、実は優しいんだってことに気づいてしまった。
この女の人も、そんな暁だから好きになったんだろうな……。
「ヘルメット、貸してくれる?」
「あ、すみません」
私は被っていたヘルメットを持ったままなことをすっかり忘れていた。
ヘルメットを女の人に渡し、そのヘルメットを女の人は被った。
その仕草さえもきれいで……ヘルメット姿は私なんかより全然似合っていた。
……その現実に、なぜか分からないけどモヤモヤした。