それ以上はなにも言わずに、私の手を優しく握る暁。
言葉はなくても……それだけで安心する。
暁の肩に頭を乗せて、さらに暁に密着した。
……ゴツゴツした体、男らしい手。
この人にこれからも守られたい。
……揺れるバスの中で、私はそんなことを思っていた。
あのつり目の不良のせいで男性恐怖症になり、友達と話したり誰かを好きになったり……当たり前のことができなかった。
それでも、ひとつの壁を乗り越えたことで、これから先どんなに辛いことがあったとしても、今回乗り越えたことが糧になるはず。
……そう思ったら、あのトラウマになった出来事への暗く重い執着も、私の中から消えて無くなっていく気がした……。
なにかあれば、あの日を思い出して泣いていた。
……そんな日とは今日でお別れしよう。
私はもう、嫌な過去に縛られず生きていく。
暁と一緒に笑って歩いていきたいんだ……。