沙良ちゃんは上半身だけ押し込まれ、もうダメだ……と半分諦めかけたそのとき。
「おい!てめぇなにやってんだよっ?!」
聞き覚えのある声が聞こえ……次の瞬間、沙良ちゃんの足を掴み車に押し込もうとしていたお客さんが、地面へと転がっていった。
「君、大丈夫……?」
心配そうにそう言って手を伸ばしてきたその人は……まさかの光聖くん。
そのとき、沙良ちゃんには光聖くんの周りがキラキラと輝いて見えたらしい。
きっと助けてくれたかっこよさと、好きな気持ちが加わってフィルターがかかったんだと思う。
私にも暁がそう見えるときがあるから、気持ちはよく分かる。
「って、えっ?!沙良?!」
「光聖かぁー。どうせならイケメンに助けてもらいたかったなぁー」
「おまえ助けてもらっといてそれはねぇだろっ」
いつもの感じでそう言ってみたものの、それは沙良ちゃんのただの強がりだった。



