………転校初日は、もうすぐで夏休みということもあり、午前授業だった。
まだ教科書もない私に、優しい沙良ちゃんはわざわざ後ろを向いて教科書を見せてくれた。
でも、さすがに後ろを向く沙良ちゃんは、各授業ごとに先生に注意されていた。
私のせいで怒られている沙良ちゃんを見て、いたたまれなくなった私は「今日はもう大丈夫だよ?」と沙良ちゃんに言ってみたものの、「大丈夫!大丈夫!」の一点張りで、結局私は押され負けてしまった。
最後の授業まで教科書を見せてくれ、改めて沙良ちゃんの優しさに触れた。
見た目は派手で話し方も決して上品とは言えないけど、中身はとてもいい子なんだと、たった1日ではあるけれど分かった気がする。
そして………放課後。
「心優ちゃん、じゃあねー」
「また明日ね!」
「心優ちゃん、バイバーイ」
沙良ちゃんのおかげで、クラスの女の子たちとはすぐに打ち解けることができた。
女の子の半分ほどがギャルで、沙良ちゃんから聞いた話によると、みんなでよくカラオケに行くほど仲が良いらしい。
唯一、この高校に転校してきてよかったと思えることは、沙良ちゃんと出会えたことかもしれない。



