「2万?そんなんじゃ身体は売れないよ」

静まりかえった路地裏で

酔っ払いの親父の手を振りほどく。

ラブホテル街の一角

獲物を狙う親父の数々。

この男もその内の一人。

ふらつく足取りであたしに

声をかけてきた。

近づいてくる親父の

酒の臭いと加齢臭に吐き気がする。

顔をしかめるあたしに

「今日は持ち合わせが少ないんだよぅ」

と諭吉2枚を差し出す親父。

ばかだな、と心で嘲笑い

あたしは金を受けとった。


最初からこんな男と

身体を交らせる気などさらさらない。

あたしはそのまま走って

男から逃げ出した。

酔っ払いは追いかけようとするが

歳と酒のせいで足がもつれて

うまく走れないようだ。

ざまぁみろ。あたしは一度も

振り返ることなく

ラブホテル街をあとにした。