* 翔 *



「キス1つで教えてやるよ(ニヤ)」



「な…!?//////
ばっ…バカァァァ!!」





バシッ!




時雨におもいっきりビンタくらったし…。




つっても…痛てぇ…。




ジンジン痛む頬を擦ってると、時雨がいきなりとんでもない事を聞いてきた―。




「…ねえ翔」



「…何だよ」




「…好きな人………いる…?」










「……………は?」





本当に唐突すぎてびびったわ。




「…いたら、何かあんの?(笑)」





こういう時は、バレないように気持ちを裏返すべきだ。




オレはそう判断した。





笑えば、鈍感なこいつも気付かない。




そう思ってたのに―





「…体育館からここまで運んでくれたの、翔でしょ?」





「…………」





まてまてまて!



「…お前、いきなり何?」




「…いや、気になったの…もしかしたらって……だって、あたしの隣にいるの…翔じゃん」




声のトーンが落ちていく




「…ちょっと看ててくれ、って葵から頼まれたんだよ」



オレは平気で嘘をついた。

最低だ…



カバーしようと言葉を付け足すと、時雨は腕を顔に覆い、顔を隠した。
でも、僅かな隙間から一滴の涙が見えた。





「…そっか……。 ワガママでごめんね…翔。 ありがとう…迷惑かけて…ごめんなさ……んっ」





目の前で好きな女が泣くのをを黙ってみる、強い男じゃねえ。





キスしたら嫌われる。
避けられる。
余計こいつが泣く。




そんなの分かってた。






でも、抑えられなかったんだ。










…葵が隣のベッドにいる事を知らずに―。