白いラインの上を走り抜ける。

ストップウォッチのタイムが切られる。


コーチ
「どうした、磯崎!
 タイムが落ちてるぞ!」


奈美
「すみません、コーチ!
 もう一度、お願いします!」


コーチ
「……
 いや、今日はこれ位にしておこう」


奈美
「え!?
 どうして?」


コーチ
「これ以上やっても無駄だからだ」


奈美
「コーチ……」


コーチ
「今日はゆっくり、体を休めておけ」


奈美
「……はい」



昨日の瞳との事を忘れ様と練習に打ち込む奈美だったが、
どうしても腑に落ちない事もあり、苛立ちさえ覚えるのだった。
その焦りのせいか、中々練習の成果が上がらなかった。

一方、瞳達は……

校舎の屋上。
そこは、いつの間にか自然と瞳達の語りの場となっていた。
瞳と鈴音以外は誰も居ない。



「奈美ちゃんとは今まで何度か喧嘩した事あったけど、
 今度ばかりはダメかも……」


鈴音
「瞳ちゃん……」


ププ
「瞳、元気出すププ」


鈴音
「瞳ちゃん、あの時もし本当の事を言ったら……」



「うん、もしかしたら信じてくれたかも知れない。
 でも、インターハイが近付いてる奈美ちゃんを巻き込みたくなかったから……」


鈴音
「……」



「と言っても、コンクールが近付いてる鈴音ちゃんを既に巻き込んでるから、
 こんな事言える立場じゃないんだけどね」


鈴音
「ううん、そんな事ない。
 私、あのお蔭で"変われた"んだから」



「鈴音ちゃん」


鈴音
「きっと、奈美ちゃんも分かってくれるわよ」



「うん。
 ありがとう、鈴音ちゃん」