特別機関『GQ』!!ーsecondー

「なんで?」
「速水、お前の妹の能力は、多分声に関係するんだよ」
「…なるほどね、だから大きな音でかき消そうってわけか」
「純にしては察しがいいわね」

こちらの動きをただ眺めていた由音は、宮原さんと何か相談を始めた。
そしてしばらく経ってから、由音は屋敷の奥へと姿を消し、宮原さんは一歩前に出る。
グッと身構えたその時、宮原さんはおもむろに両手を挙げて

「先輩方、降参です」

笑顔でそう言い放った。

「え」
「は?」
「えっ」

三人同時に変な声が出る。

「ですから、私達は降参します」
「いやいやなんで!?私今来たばかりだし、戦う気満々だったよ!?」
「速水先輩がいらっしゃったからですよ」
「…へ!?」

相手が攻撃してくるムードではないと感じ取ったからか、弥生は床から手を離し、立ち上がる。

「阿仁間先輩の能力は私が封じられますが、天道先輩は由音ちゃんの能力をしのぐことができます。残念なことに、私の能力は一部の方にしか効力がないのも考え合わせると…こちらには打つ手がないんです」
「で、でも、それと私が来たことには…!」
「速水先輩はこのくらいの距離、簡単に越えられるのでしょう?」

宮原さんが屋敷と屋敷の間を指す。
確かにその距離は、私なら簡単に越えることができるものだ。

「速水先輩がこれを飛び越えてこちらにいらした場合、体術勝負となります。そうなると、どちらにしても負けてしまう…と由音ちゃんが言ってました」
「由音が…」
「ですから、降参です」

再び宮原さんが笑顔を浮かべる。

「…本心?」
「本心ですよ!」
「ほんとにぃ?」
「…本心みたいよ」

宮原さんの後ろから現れた心がそう言った。

「あ!本物の心!」
「何よ本物って………あんたまさか偽物に…」
「騙されました!」
「ばっかじゃないの!?何年一緒にいるのよ!」
「おお…心の怒号だぁ…」

心は呆れたように私から目線をそらす。そんな心を心配そうに宮原さんが覗きこみ、

「大丈夫ですか?」
「…大丈夫よ。眠らされていただけだし…それより、幽霊いなくなったのね」
「あ、はい。解散させました」

そんな二人の横を素通りして、一歩前に出た由音は

「はい」

自分の手から指輪をはずし、私に向かって投げる。私がそれを難なくキャッチしたのを見ると

「じゃあ、警視総監さんの所へ行きましょうか」
「ってなんで由音が仕切ってんのよ!」

私の声は全員に無視され、疲れたわねーなんて感想をもらしながら皆が一斉に外へと歩き出した。