そしたら一気にモテんのに馬鹿な奴!!!

だんだん可愛そうになってきた私は川谷の制服が濡れていることを思い出す。


「・・・っ制服大丈夫???」

「・・・あー、確かに。なんか気持ち悪い。」

「それ水??」

「・・・かな。」

「もー、男なんだからやり返せばいいじゃん。弱虫っ!」

「・・・やり返せばやり返す分だけ無駄だよ。むしろもっと遣られる。こっちだって一応被害は少ない方がいいしね。」

「はぁ・・・。何て言うか、川谷って・・・。」

「・・・君は口出ししないで。」

「ハイハイ。」

呆れて失笑する。


なんか今度はこっちの方が一枚上手じゃん、なんてこと思いながら。

「・・・着替えてくる。」

「ん。」

軽く返事して立ち上がる川谷を見送る。

川谷はすっと立ち上がると私の方を少し見ながら言った。

「・・・聞いてあげるよ。」

何のこと言われているのか分からない私は首をかしげる。

「何を???」

「・・・名前。君とは何かと縁がありそうだからね。」

それを聞いて私は慌てて答える。

「美麗よ!!!東城美麗!!!!!美麗って呼んで!!!!忘れたらただじゃおかないんだからね!!!!!」


強気な私の発言に彼は笑いながらいう。



「美麗か・・・。東城さん、よろしくね。」




オイ、名前呼びじゃねーのかよ。

何だし、東城さんって。他人っぽいなぁ。

まぁいいや。名前覚えてくれたらそれでいいし。


「そ。よろしくね♡


 か・わ・た・に・く・ん??」


舌を出しながら意地悪く微笑む私。

よし、完璧すぎる。

川谷は私の笑みの浮かんでる顔を凝視しながらそのまま教室を出ていく。

離れていく背中を見て心ん中で呟く。


――――・・・美麗って呼んでよ、ばーか。


(あ、こんな呟き前にもあったな。)