川谷の読んでいた本を受け取るとあたしは首をかしげる。


頭にはたくさんの疑問符を浮かべて。


「傍・・・観・・・者・・・?」


本の題はそうだった。


黒いカバーに赤い文字でそう刻まれた本は見るからにホラー系の本。


「傍観者ってなぁに?」


純粋に意味が分からなくて聞いた。

そしたらまた口角だけをくいっと上げて


「傍観者って言うのはまさに僕の立場のこと。」

「へ?川谷の立場??」


あ、どさくさに紛れて川谷って言っちゃった!!

「そう。僕は傍観者なの。」

「意味が分からない・・・んですけど?」


「ま、辞書で調べな。」


そう言われるとあたしは急いで携帯を取って調べ始める。


カチッ

「出た・・・。」


傍観者・・・。

当事者にならず、ただ見ているだけの人。場合によっては責任の意識がないだけ加害者よりたちが悪い。見て見ぬふりをしている人も含む。



なるほど・・・。

「でも、川谷はどちらかといえば被害者なんじゃない?・・・傍観者は川谷がいじめられている所を見て見ぬふりしている人なんじゃないの?」

「違う・・・。僕の人生自体が傍観なんだ。僕は自分の人生を傍観している。仮に僕をいじめようとする奴が現れても止めたりしない。


 何故か?理由は一つ。僕は傍観者だから。」



よくわからないけど熱弁する川谷を見てくすっと笑うあたし。

「何がおかしいの?」

「別にっ!!で、どーゆーストーリー??」

「虐殺事件を犯した少年が主人公が自分と関わりを持った奴を片っ端から殺す話。」


「・・・おもしろいの?それ。」

「おもしろい。」

「そっか。怖そうだね。」

「そうかな。僕はこの主人公の心情に同感だ。」

「最後はその主人公、どうなっちゃうの?」

「捕まって処刑される。」

「うわー、なんか超怖い・・・。ていうかそれってBADENDなんだよね?」

「どちらかといえばそうだけど。HAPPYENDなんじゃない?人を殺していくうちに自分の価値観に気づくことができる・・・。いい終わり方じゃない?」


そう語る川谷は何故か主人公を羨んでるみたいに見えた。


・・・川谷。予想以上に手こずりそうね。