「ダメ...」



私はその場を出来る限りの猛ダッシュで去る。



あのままいたら庄司君の前で泣いてしまう所だった。



そんなことをしたら庄司君に迷惑がかかってしまう。



私みたいに庄司君のことを知らない人はいるだろうけど、どこで誰が見ているかわからないもの。



「待って下さい!」



ちょうど小道に入ったところでいとも簡単に捕まってしまう。



自分ではなかなか速いと思っていたけれど、やっぱりスポーツ選手には勝てなかった。



当たり前だよね。



「放っておいて!」



「何言ってるんですか!放っておけるわけないでしょ!」



「何で...」



私なんかに優しくするの?



その優しさは私の堪えていた涙を溢れさせるには十分だった。



庄司君は泣きじゃくる私の髪を撫でた。



人前でこんな風に泣くなんていつ以来だろう。



いい年した女がこんな風に泣くなんてみっともなさすぎるなんて思いから泣くことをやめていた。



いや、我慢していたんだ。