あたしと王子とバカ

「これ何なの!?」



パンツ一丁になったバカの顔近くにマッチを見せ付ける。



「いや、これは...!」



驚いたようで目を見開くバカ。



半年もないからもしかして...とは思っていた。



でもほぼ毎日帰ってくるし、そんなことするお金もないはずだし、何より...



私を裏切るわけがないって思ってた。



「...出て行って。」



「違うんだ!ほんの出来心で!」



テレビで見たことのある陳腐な台詞を並べるバカ。



バカ



バカ



バカみたい!



あたしバカみたい!



「良いから出て行って。」



「いや、ここ出て行ったら俺行くとこねーし...」



ここあたしんちだっつーの!



「わかった。」



「夏奈美...」



ホッとしたのか私を抱き締めようとするバカ。



「それなら私が出て行く!」



その腕をすり抜けて、リビングのテーブルに置いてあった財布とケータイを掴み、玄関へ向かう。



そんな私にバカは待てって!なんて言っているけれど、そんなんで待つわけがない。