彰哉が逝ってしまってから一ヵ月がたった。



彰哉のお母さんの話によると
初めから彰哉は心臓の手術をするために東京に来ていたらしい。



そこで私と出逢い、
手術を受ける事無く死んでしまった。


彰哉が死んで一ヵ月がたつと言うのに
私は未だに泣けずにいた。



彰哉の"死"を、まだ信じることができなかった。


ベランダに出て空を見上げれば吸い込まれそうになるほど暗い空に
満月が浮かんでいた。


『満月に日にはたくさんの命が誕生する』

彰哉はそう言っていた。


でも、私にはまだまだ彰哉が死んだ満月の日に産まれてくる命を喜ぶことはできなさそう。



満月が、彰哉を連れて行ってしまったような感じがした。


あんなに好きだった満月が、嫌いになってしまった。


目から零れ落ちた一筋の涙が
私の頬を静かに濡らし、月の光を受けて何よりも明るく輝いていた。