「…闇の天使はカナンを護るための存在。ならば彼は必ずカナンの傍にいるはずだ…と?」

セイジュが問いかけると、父親は力強く頷いた。

「女神カナンは封印のためにそのエナジーを感じるのは至難だが、闇の天使ならばそのエナジーを感じることも不可能ではない。彼は本来、死ぬことはない永遠の命を持つ者。神に与えられた禁忌さえ破らなければ永遠が約束された天使なのだ」

……神に与えられた“禁忌”。

彼に与えられた禁忌とはいったい……?

ぎゅっとわたしの腕をつかむいずみさんの力が強まった。

「…いずみさん?」

「…生きているはずない。彼は…紫貴(シキ)は、禁忌を破ったと…言っていたのだから…」



『いずみ』


いずみさんの体から、激しく熱い想いがわたしの全身に伝わってきた。

これは、この想いは……いずみさんと、“闇の天使”の……想い!!


『オレは神子以上に護りたい人ができた。それは契約違反だ。オレは月へ還る覚悟はできている』

『神子以上に護りたい人って……?』




『君を愛して……そして散る』





『待って………紫貴――――――!!!』




いずみさんは胸の三日月のペンダントを愛おしげに握り締めていた。

いずみさんの彼への想いが伝わってくる。

ずっとずっと秘めていた想い。

いずみさんは、カナンを護るためにずっと闇の天使への愛を心の奥底に封印していたんだ。