家の中は簡素な雰囲気だった。

部屋も小振りで最低限必要な家具以外は置かれていない。

椅子もテーブルも全てのものが石でできているらしかった。

セイジュの父親らしい男性は疲れ切った表情を浮かべながらも、わたしたちを部屋へと案内してくれた。

彼は黒髪の短髪で、顔もセイジュとは似ていない。

どこか人を信じない雰囲気を漂わせていた。

親子と聞いても不思議な気がする。

椅子に座って部屋の中を眺めると、部屋の端に日本で言うと仏壇のような一角があるのが目についた。

たくさんの月見草が花瓶に活けられている。

見つめていると、セイジュが歩み出て月見草の前に立った。

「……5年前に母さんは亡くなった。そうですね?父さん」

「そうだ。ファントムの奴らに捕まってな。我々には奴らに抵抗する能力の持ち合わせももうないというのに古代神を崇め続けていた妻は奴らの目の敵にされたのだ。…妻には古代神を取り返す力など全くなかったというのに……!」

声を噛み殺して机を叩く父親を見てセイジュは哀しげに瞳を細めた。

お母さんがファントムに殺されていたなんて……。

静まり返った部屋に、突然コツコツと靴音が鳴り響いた。

赤い靴を軽快に鳴らしながらいずみさんは月見草の前に立った。