本当にどこまでも果てしなく続くかと思われた草原、もとい蒼幻はすぐに終わった。

蒼い霧に包まれた瞬間、目の前に小高い丘が現れ、その下に石の家がまばらに散らばっている小さな集落が広がっていた。

「あそこが月の一族の棲みか……」

「あれでもこのミラージュムーンで一番大きな集落だ。月の古代神を奪われた彼らは能力も弱まりその数を年々減らしていったんだ。今では生まれ変わることのできる一族も限られてきた。地球でカナンによって護られていた君たち月の一族は別だけどね」

わたしたちはママによって護られていた。

ママは逃げ伸びてきた地球で一体どれほどの使命を負っていたのか、考えると胸が痛くなった。

「わたしもここに来るのは初めてだわ。ずっと昔の前世ではミラージュムーンは存在していなくてわたしは“月”にいたもの」

いずみさんが漆黒の瞳でしげしげと集落を眺める。

でも、なにかとても嬉しそうだ。

「行くわよ、美月。月の一族がきっとわたしたちを助けてくれるわ」

勇んで前進するいずみさんとは対照的に、セイジュはあまり気乗りしないという様子でわたしたちの後ろをついてきた。

……やっぱり何かあるんだろうか?