「……パパ…」

温かいパパの腕に寄りかかって泣いていたその時。

パパの携帯の着信音がして、「美月、ごめん」と言ってパパは携帯を手に取った。

携帯の待受画面を見たパパの視線が一瞬止まったのを見たわたしは、嫌な予感で胸が疼いた。

………まさか。

「…パ」

「病院からだ」

………ドクン…!!

パパはそのまま素早く携帯のフリップを開けると、「どうした?」と病院の関係者らしき人と話しだした。

「容態は?」などと冷静にドクターらしく話しているパパに、ママのはずがない、と言い聞かせるように心臓の鼓動を鎮めようと大きく息をする。

「わかった、すぐ行く」

パタン…と携帯のフリップを閉じて振り返ったパパが、絞り出すように言った一言。

「ママが、危篤だ」

両手で顔を覆ったわたしを背にしてパパはすぐさま立ち上がると、玄関に早足で向かう。

「……ママ」

震えながら涙を流し動けないわたしをパパが玄関先から振り返った。

「美月、呆けてないで、来い!!お前が行かないで、どうする!?」

パパの声は、自分自身の身を切るほどの激しい慟哭に聴こえた。

パパの声を合図に、もつれながら懸命に走りパパに飛びついたわたしを、パパは全身で受け止めてくれた。

「……パパ!!」

わたしの髪にパパは顔を埋めると、低く掠れた声で言った。

「行こう、加奈が待ってる」