「死ぬって……どういうこと?…沙希!」

およそ明るい沙希には似合わない表情で私を見つめる沙希に私は動揺していた。

あの雨の日、拓ちゃんの部屋を見上げていた沙希と今の沙希が重なった。

「美月に久遠くんを取られちゃったから、死ぬのよ」

暗く小さくつぶやく沙希。

「なに言ってるの!?私、拓ちゃんとはなんでもない。ただの幼なじみなんだよ!?」

「…信じない、そんなの」

冷たく言い放たれたその一言に私は眉をしかめて言いよどんだ。

沙希…やっぱりおかしい…。

いくら一途だからってここまで……!

沙希の誤解を解こうと一歩前へ歩み出た瞬間。

沙希の後ろの壁一面のミラーが波打つように揺れた。

揺れるミラーに蒼の光にまとわれた満月がぽっかりと浮かび上がった。

「……月!?」

満月の下には鬱蒼と茂る森に囲まれる湖が映し出され、その湖の水面に仰向けに浮かぶ少女の姿に私は釘付けになった。

腰まである長い金髪に透けるような白い肌。

少女は白のローブのような衣服をまとい瞳を伏せたまま徐々に湖の底へと沈んでいく。

「…似てる。私がいつも見る夢の中の風景に……」

夢にはいつも蒼い月と湖と少年が現れた。

ミラーには少年の変わりに少女が映っているけれど……。

「…美月」

ふいに沙希に呼ばれ、私はハッとしてミラーから目を離し、沙希を振り返った。

「!?」