雨はかなり激しく降り始めていた。

ミラーハウスの前に来た私たちは、既にびしょ濡れになっていた。

「ねぇ、沙希。もうこんなに雨も降っているし、今日は帰ったほうがいいんじゃない?」

舞がとりなすように沙希の肩をつかんで言った。

沙希は聞こえていないかのような表情でスタスタとミラーハウスへと歩いていく。

立ち止まってついて行かない私たちに沙希は振り返ると、

「舞はいいよ。でも美月は来て。久遠くんのことで少し話したいの」

強い口調でそう言った。

「沙希!久遠くんのことでまだ何か怒ってるの!?」

舞が沙希に向かって叫ぶのを制止するように私は言った。

「いいよ、舞。私、沙希と話す。このままじゃいけないもの。舞は向こうの休憩所で待ってて」

「…美月」

舞は心配そうに私を見つめる。

その様子を見ていた沙希は何も言わずに一人でミラーハウスへと入って行く。

「沙希!」

ミラーハウスへ入るのはとても怖かった。

あの日、口を塞がれ中に引きずり込まれた時の恐怖が甦ってくる。

そしてその中で見た不思議な光景。

ミラーに映る10代らしきママが石のベッドに寝かされていた光景。

そのあとにそこで出会ったセイジュ。

何もかもが昨日のことのようだ………!