「…あ、雨!?」

さっきまでいい晴天だったのに、突然雨雲がたちこめると一気に雨が降り出した。

「雨の予報なんてあったっけ!?」

「ないよぉ!天気予報大外れ!」

私たちは天気予報が外れたことに不満を感じながら走り出した。

とりあえず屋根のある休憩所まで、そう思って走っていたその時。

途中で、沙希がふと足を止めて一点を見つめたまま動かなくなった。

「沙希?どうしたの?」

沙希は呼ぶ声にびくともせずにじっと遠くを見つめていた。

私が近寄って沙希の顔を覗き込んだ瞬間。

「……あそこに行こうよ」

沙希が雨に濡れた顔で薄く微笑んだ。

沙希が指差す方向を見た私は一瞬胸が凍りつくのを感じた。

……ミラーハウス――――!?

なんで?

セイジュと出会った時にあのミラーハウスは粉々になって消えたはずだ。

しかもあのミラーハウスは全て幻だったはず……。

でもそのミラーハウスはあの日と全く同じ形でそこに存在していた。

ゴクリ、と喉が鳴る。

私は恐怖となぜという想いが交錯していて混乱寸前だった。

……嫌だ、あそこには行きたくない!!

「沙希…あそこはやめようよ。なんか気味悪いし…」

沙希は振り返らなかった。

振り返らずに低い声でつぶやく。

「なんで?雨宿りだよ。行こう」