「天使の泉」に入ると、今の女子中学生を見送ったばかりのような笑顔で案内係の香織さんがすぐ傍に立っていた。

香織さんはいずみさんと同じくこの「天使の泉」をずっと護っている女性で、30代後半くらいのとても優しい笑顔をもった人だった。

「美月ちゃん、来てくれたのね」

香織さんは相変わらずの人懐っこい笑顔で私を出迎えてくれた。

「香織さん、お久しぶりです。お元気そうですね」

「美月ちゃん、最近なかなか来てくれなかったわよね。いずみさん怒ってたわよぉ~」

「え!?」

冗談めかした香織さんの言葉に半分ほんとかもなんて少し顔を強張らせた。

「なぁんてね、……あれ?美月ちゃん、この人…?」

香織さんがセイジュを見て一瞬真顔に戻った。

「あ、えっと、クラスメートでセイジュって言うの。彼もいずみさんに占ってもらいたいらしくて連れて来ちゃった」

ふ、不自然じゃないよ、ね…?

冷や汗が出そうになりながらその場を取り繕う。

香織さんは少し考えるような表情をしたあとですぐに微笑んで言った。

「そう、美月ちゃんにも彼氏ができたか~。いいわよ、特別に今すぐ通してあげるわ」

か、彼氏……!?

ま、まぁこの場合は仕方ないか…。

セイジュを振り返ると、彼はなんの動揺もない様子でクールに香織さんを見つめていた。

さすがセイジュ………。