「なるほど。仲間の気を感じるな」

学校を出た私たちはそのまま「天使の泉」に来ていた。 

少し薄暗くなった通りで私とセイジュが立ち尽くすその先には、オレンジと黄色の外装に彩られた占いの館があった。

何度か改装が加えられているようだが、温かい雰囲気の店構えは昔から変わっていない。

喧騒ざわめく大通りからは一線を画した裏通りにある隠れ家的な店だった。

いつもそれほどの客は来ていないというのに、昔から変わらずそこにあるということが少し信じられないような気持ちになる。

「いずみさん、いるはずだけど…」

占いの館のドアノブに手をかけようとしたその時、同時にドアが開き驚いて手を引っ込める。

出てきたのは、この近くの中学の制服を着た女子中学生二人だった。

二人は少し興奮したような面持ちで会話に夢中になっていて、私達が目に入っていないようだった。

「ねぇ、詩織。すごくない?月野いずみ!名前言っただけであんなに当てちゃうなんて!」

ショートカットの女子が興奮気味にふわりとした巻き毛の女子に同意を求める。

「うん!やっぱりママの言ってたとおりすごい人なんだよぉ!ママは月野いずみさんのお陰で新しい運命に巡り会えたって言ってたよ。パパに巡り会えたって」

「そっか、千葉家は仲良いもんねぇ!また詩織のママに話聞きたいな。ふんわりとしててかわいらしいよね、美織ママ!」

詩織と呼ばれる女子がふんわりとした笑顔で笑う。

「うん、ぜひ来て来て!美織ママって呼んであげたら喜ぶよぉ!」

楽しそうな笑い声を見送ると、私とセイジュは顔を見合わせた。

「いずみさんも評判いいみたいだなぁ。私は占ってもらったことないんだけどね」