「右手のパワーだけを弱めたんだ。オレの実体は月にある。今ここにあるオレの体は、ミラージュムーンのパワーで実体に見せかけられた幻だ」

今、ここにあるセイジュの体は幻…!?

セイジュの右手を両手で握ると、温かみはあるのに、少し力を入れるだけですり抜けてしまう感覚があった。

「君の母親も、実体だけここに置いて魂だけがミラージュムーンへと向かったんだ。月の一族と言えど、地球に何世紀も居ついた者がそう易々と実体ごと月へ還れるはずはない」

「じゃあ、私が実体のまま月へ行けるってどういうこと?」

私はセイジュの手を離すと目の前にあるセイジュの蒼く輝く瞳を見上げながら問い返した。

私だって地球で生まれてここでずっと暮らしてきたはずだ。

この15年の記憶しかないけれど…。

「君には魂が二つあるって言ったろう?その力を持ってすれば実体ごと月へ行くことは可能かもしれない」

二つの魂なんて言われても実感なんてないのに、どうすればいいのか全く見当もつかないまま、私はセイジュの次の言葉を待った。