拓ちゃんの唇は微かに震えていた。
キスしそうで、しない距離。
キスできそうで、できない距離。
今のこの距離が私と拓ちゃんの距離。
この薄いヴェールのような壁が生まれた時から傍にいた私と拓ちゃんを隔ててきたのだと今ならわかる。
今やっと気づいた拓ちゃんの気持ちに私の胸は締め付けられた。
でも、拓ちゃんは言えないだろう。
「……しないの?」
わずかに唇を動かしてつぶやいた私の言葉に拓ちゃんの目は驚いたように見開かれた。
私は口の端を微かに上げて笑った。
…笑おうとしていた。
拓ちゃんは急激に引いていく波のように腕の力を緩めると私の腕を放し力なく両腕を下ろした。
「……ごめんね」
その言葉とともに拓ちゃんの部屋を飛び出していた。
ごめんね。
恋じゃなくてごめんね――!
拓ちゃんは誰よりも私の気持ちを知っていたんだ。
私自身よりも。
拓ちゃんに恋してない私に気持ちを告白すれば、私達のかけがえのない幼なじみの関係は終わってしまうから。
拓ちゃんも私達の関係を大切にしてくれていたのが、あの距離から伝わってきた。
拓ちゃんは不器用だけど、優しいから。
拓ちゃんの気持ちに無理に応えようとした私の笑顔の「嘘」に――拓ちゃんは気づいていた。
ごめんね。
恋できなくて、ごめんね。
キスしそうで、しない距離。
キスできそうで、できない距離。
今のこの距離が私と拓ちゃんの距離。
この薄いヴェールのような壁が生まれた時から傍にいた私と拓ちゃんを隔ててきたのだと今ならわかる。
今やっと気づいた拓ちゃんの気持ちに私の胸は締め付けられた。
でも、拓ちゃんは言えないだろう。
「……しないの?」
わずかに唇を動かしてつぶやいた私の言葉に拓ちゃんの目は驚いたように見開かれた。
私は口の端を微かに上げて笑った。
…笑おうとしていた。
拓ちゃんは急激に引いていく波のように腕の力を緩めると私の腕を放し力なく両腕を下ろした。
「……ごめんね」
その言葉とともに拓ちゃんの部屋を飛び出していた。
ごめんね。
恋じゃなくてごめんね――!
拓ちゃんは誰よりも私の気持ちを知っていたんだ。
私自身よりも。
拓ちゃんに恋してない私に気持ちを告白すれば、私達のかけがえのない幼なじみの関係は終わってしまうから。
拓ちゃんも私達の関係を大切にしてくれていたのが、あの距離から伝わってきた。
拓ちゃんは不器用だけど、優しいから。
拓ちゃんの気持ちに無理に応えようとした私の笑顔の「嘘」に――拓ちゃんは気づいていた。
ごめんね。
恋できなくて、ごめんね。


