学校までの道のりは徒歩で20分。

チャイムが鳴るまであと15分ってところだから、とりあえず全力疾走ね。

玄関を出てそんな計算をしながら、全力疾走を始めようとした私。

チリンチリン。

と、自転車のベルの音が後ろから聞こえてきて、私は自分の幸運をかみ締めつつ振り返る。

「拓ちゃん、いいとこに来た!乗せて!」

「またかよ、美月」

呆れ顔で自転車にまたがりながらも、ちゃんと停まって顔でクイっと自転車の後部を指して乗れよってしぐさをする拓ちゃん。

「サンキュ、拓ちゃん」

春の暖かい風を受けながら、私と拓ちゃんは学校へ向かって走り出す。

「拓ちゃん、持つべきものは幼なじみだね!」

「何言ってんだよ。オレはお前に利用されてばっかだぞ」

「この前の宿題、勝手に見て写したこと言ってんの?だからごめんって謝ってるでしょ!?」

拓ちゃんとは、小さい時からずっとお隣同士で、お互いに兄弟もいないから友達以上に仲が良い。

同い歳の幼なじみ、久遠拓真(クドオタクマ)。

顔はそれなりに整っててかっこいいから、女の子にはモテるのに付き合う気配はなし。

「ね、友達の沙希がね、拓ちゃんのことかっこいいって言ってたんだ」

なんて、私がたまにカマをかけても、

「へぇ。ま、オレは確かにかっこいいけど」

そっけなく、はぐらかす。

「ばぁか。嘘に決まってるでしょ。拓ちゃんなんか誰も相手にしないもんね!」