「で、話って?」

ベッドに座った拓ちゃんとデスクの椅子に座った私がむかえあった状態で拓ちゃんが語りかけてきた。

「沙希と…何かあった?」

「何かって?」

「沙希の様子がおかしくて。今日も学校休んだし、昨日も泣いていたみたいなの」

沙希が拓ちゃんの部屋を見つめていたことはなんとなく言えなかった。

拓ちゃんは私の顔をちらっと見るとすぐに床に視線を落とした。

「拓ちゃん、沙希に何か言ったの?」

祈るような気持ちで拓ちゃんを見つめてしまう。

伏目がちな拓ちゃんの瞳からは何も読み取ることはできない。

拓ちゃんは突然立ち上がると、イライラした様子で素早く私の腕を取りベッドから立ち上がらせた。

私の腕を掴んだままじっと私を見つめる拓ちゃんの表情には苛立ちが強く表れていたけれど、瞳には微かな困惑が浮かんでいた。

「拓ちゃん、どうし…」

言いかけた私の腕をグイっと引っ張った拓ちゃんに私は引き寄せられた。

気がつくと拓ちゃんの唇から漏れる吐息が私の唇にかかるくらいの距離に拓ちゃんの顔があった。

苦しそうに歪む拓ちゃんの唇が私の唇のすぐそばにあって私の心臓を跳ねさせた。