それからのことはよく覚えていない。

セイジュに聞きたいことはいっぱいあったのに、気がついたらセイジュの姿は消えていて私は誰もいない保健室に一人佇んでいた。

学校を出て少しすると雨が降り出してきた。

傘を持ち合わせていなかった私は早足で家へと急ぐ。

降り注ぐ雨の冷たさがセイジュの体温の温かさを思い出させた。

冷たい蒼の雨のような瞳が、一瞬だけど私の心の奥底にまで届く温かさを帯びたことも。

セイジュ…。

あなたは私に何かを伝えたかったの?

雨に打たれながら家へ帰り着こうとしたその時、長い髪を雨に濡らしながら空を仰ぐように見つめる人影が目に入った。

沙希だった。

私は沙希を遠目に見つめながら思わず足を止めた。

なんで沙希がここに?