セイジュはからかうような笑みを浮かべると私の長い髪をひと房つかみとって言い放った。

「昨夜君の部屋で会っただけじゃ足りなかったから」

体中から顔に血が集まるのがわかった。

きっとすごく真っ赤な顔してる、私。

舞の驚きの表情が横目に見えた。

いてもたってもいられず、掴まれた髪をとってセイジュの手から離し何か言い返してやろうと口を開けかけたその時。

「久遠君……」

舞の小さいけれども驚いたような声が聞こえ、私は廊下の方を振り向いた。

舞の後ろにかすかに驚きの表情で私を見つめている拓ちゃんの顔が見えた。

「拓ちゃん…」

拓ちゃんは私から目を離すと踵を返して拓ちゃんのクラスの方へと歩き出した。

拓ちゃん、今の聞いてた?

今までの拓ちゃんなら何か一言くらいからかってきそうなのに。

何も言わないで行ってしまった拓ちゃんの後ろ姿から

――私は目が離せなかった。