無造作に黒いカバンを机に置いて、長い足を放り出すように座った男性の姿を見て私は思わず立ち上がった。

あまりにも勢いよく立ち上がったせいで、後ろの椅子がガタンと音をたてて倒れたのがわかったけど、彼から目を離さずに私は大声で叫んだ。

「セイジュ!!」

うちの学校の紺色のブレザーを着たセイジュは、片方の眉をくいっと一瞬吊り上げて私を見上げると、私とは正反対なクールな眼差しで一言。

「なに?」

あまりにも平然と一番の特等席に座っているセイジュを見て、なにか頭に血が上りなぜここにいるのか問いただそうとしたけど、その時点でクラス中の視線が私に集まっているのを感じて私は口ごもった。

「や、だからなんであなたが…」

「何してんだ?須藤!」

教室の対角線上のドアの前にいつの間にか立っていた担任の教師の声が響き渡った。

私はあまりの驚きと恥ずかしさで教室中を見渡したあとに固まってしまった。