甘い花の香りが肌にまとわりついているような不思議な感覚に包まれながら席に着いた。

この香り、どこで嗅いだんだっけ?

少なくともあんな甘い香りはこの学校のどこにもないはずだ。

なんとか朝のホームルームに間に合った私は一番後ろの窓際から2番目の自分の席に座った。

沙希や舞とは離れてしまったけど、なかなか幸運な席でお気に入りだ。

席に座った私は朝の日差しが差し込む隣の窓際の席にふと目をやった。

一番後ろの窓際の席。

きっと一番幸運な席だろうその場所には誰もいなかった。

今日隣いないんだ。

ぼんやりとそう思った瞬間、強い違和感を感じた。

あ……れ?

隣って誰だっけ?

手のひらに妙な汗がにじみ出てくるのを感じた。

隣の人間を思い出せないわけがないのに、その席に座っていたはずの人を思い出すことができない。

隣の席を見つめながら必死に考えていると、ガタっと音をたてて椅子を引く大きな手が見えた。