そして、シャッと音をたててカーテンを開けると、夜空に輝く満月を露にし、不敵な笑みを浮かべて私を振り返る。

「リアナ。お前はミラージュムーンでは、女神と崇められている」

「ミラージュムーン?」

「月世界で唯一無二の存在であるはずの月の神子。それがお前の母親だ。女神は二人と存在しない。それが月の掟だ。だが、お前が現れた」

男は壁に寄りかかり腕を組むと、首だけを動かして窓の外の月を見上げる。

「神子の娘であっても、神子の魂を受け継ぐことはあり得ない。現に、彼女の前世での娘のリオンは神子の素質などなかった。だがお前は確かに神子の魂を受け継いでいる」

「それ……どういうことなの!?」

「ミラージュムーンは滅びに瀕した月の一族の生き残りが作り出した幻の月だ。一部の『ファントム』と呼ばれる一族の得意技が幻世界を作り出すことだった。今、その幻が本物の月を飲み込もうとしている」

幻世界……ファントム?

男の口から次から次へと紡ぎだされる夢のような話に私はただ唖然とするだけだった。

「ファントムの奴らは月の古代神を奪い去り、ミラージュムーンに封印した。古代神を代々護ってきた我々月の一族への宣戦布告さ。そのファントムが崇めているのがお前、というわけだ」