部屋の壁際に立てられた私の背丈ほどのスタンドミラーに私の瞳は釘付けになっていた。

まさか、こんなことが……!!

ゆっくりとミラーに近づき、震える右手でミラーにそっと触れる。

私が触れたその場所には、ママの左手。

ミラーの中に、昼間ミラーハウスで見た10代らしきママが、いた。

ママはしっかりと瞳を開けて、両手を開いてミラーに押し付け、こちらへ来たいとばかりに叫んでいるように見えた。

「ママ……」

ママの声は聞こえない。

でも、蒼の瞳で涙を流しながら何かを叫んでいるママに必死で叫び返す。

「ママ!!どうして、こんなとこに!?あいつなの?あいつがママを!?」

ママはゆっくりとミラーから手を離すと、目を細めてかすかに微笑んだ。

暗闇の中、ママの唇が、
『ミ・ズ・キ、ア・イ・シ・テ・ル』と、確かにそう動いたように見えた。

「ママ……私もママが大好きよ。そして、パパもママをとても愛してるって。ママ、お願い、還ってきて!!」

そう言った瞬間、ママの背後から大きな手が現れママの口を塞ぐと、ママはそのまま深い暗闇の中に飲み込まれ始めた。

「ママ!!」

私は最後の髪の毛一本が飲み込まれる瞬間まで、身動き一つできずに見ていた。

ユラリ、とミラーが揺れたと同時に、ママの姿は跡形もなく。

そこにはただ、呆然とする私の姿が映っているだけだった。

「ママ……どうして?」

その場に倒れて泣き崩れたいと思った瞬間。

背後に確かに感じる気配に私の心臓が高鳴る。

ドクン!!