満月の夜空の下、家に帰り着くともう既に午後10時になっていた。

私を心配して一緒に帰るというパパを無理やり押し切って一人でタクシーに乗り家路に着く。

パパは何よりも、ママの傍にいたいはずだ。

そして、ママも。

パパはああ言ったけど、ママだってパパのことを愛しているはずだ。

ママの精神が月へ還ったという瑞樹さんのもとへ行っているかはわからないけど。

小さい頃からママを見てきた私には、わかる。

ママはパパをとても愛している。

ママの精神がどこかへ行ってしまっているとしても、自分の意思でそうしたとは、とても思えない。

きっと、あの人……。

私と同じ蒼の瞳をしたあの男がママをどこかへ連れ去ったんだ。

『美月、何かあったらすぐにパパを呼びなさい』

パパはそう言ってくれたけど。

できるならパパには少しでも多くママの傍にいてほしい。

あの男が会いに来たのは私なのだから。

絶対にまた私の前に姿を現すはずだ。

そんな想いを巡らしながら、私は真っ暗になった自分の部屋のドアを開ける。

電気をつけようとスイッチに手を伸ばした瞬間。

ビクっと震えた体はそのまま硬直し、伸ばした手はスイッチの手前で動くことができなかった。