「美月、ここだよ」

その夜、パパは私をママの病室に連れてきてくれた。

ひっそりと静まりかえった個室に足を踏み入れる。

病室に入ってママの顔が見えた瞬間、私は我慢できずにベッドに駆け寄り、ママの手を取っていた。

「ママ!!」

ママはまるで眠っているかのように穏やかな表情で。

違うのは、あの優しい瞳を開いてくれないことだけ。

「ママ、手だってこんなに温かいのに、なんで目を開けてくれないの?」

パパはベッドの横に椅子を置いて座ると、ママの顔をじっと見つめたまま、私に語り始めた。

「美月、ママは大きな使命をもって生まれてきたんだ」

「使命?」

「そうだ。ママ…加奈は、月の神が産み落とした月の神子(ミコ)。パパは神子である加奈を護るガード(守護天使)だ」

「神子とガード…?」

昔を懐かしむように淡々と語り続けるパパを私は食い入るように見つめる。

「何百年も昔の話だ。月が滅びの危機に瀕した時、神子とオレ達ガードはこの地球に逃げ延びた。オレ達月の一族の命は永遠。魂が滅びない限り、何度でも生まれ変わることができる」

何度でも、生まれ変わることができる?

「加奈は、生命の生死を司ることができる唯一の女神。月の一族の守り神として生きることが加奈の使命だ」