「パパ?」

パパに抱きしめられるのなんて、小さい頃に遊んでもらった時以来で。

パパの胸、こんなに温かかったんだなんて思いが頭を駆け巡った。

「美月、ママにはとても大切な故郷があるんだ。ママは少しだけ、そこへ旅立ったのかもしれない。でも、パパが絶対に連れ戻してみせる」

そう言ったパパの肩は少し震えていて。

冷静なふりしてほんとうは、パパが一番つらいのかもしれない、なんて私は感じていた。

そうね、パパはほんとうにママを愛しているんだもの。

取り乱してもママを助けられるわけがないのよね。

私はパパの背中をぎゅっと掴みなおして、同じ想いを抱いているパパに訴えるように語り掛けた。

「パパ、私、胸のずっと奥にもう一人の自分を感じるの。月が愛しいけど、怖い。パパ、知ってるんでしょ?ママはいつも月を見上げてた。教えて、パパ。ママが誰なのか。そして、私は……」

パパは私の肩をつかむとグイっと突き放して私の顔をじっと見つめる。

そして、長いまつげのかかった目を伏せると、パパの綺麗な顔がふっと苦笑にも似た笑みをもらした。

「美月、いつのまにそんなに綺麗になったんだ。お前のアイスブルーの瞳……ママ以上だ」

今なら、わかる。

私と、蒼の瞳のあの男は、同類だ。

味方であっても敵であっても、

私達は同じ種族なのだ。

私の胸の奥の何かがそう告げていた。

この蒼の瞳は……私とママをつなげてくれている。

だから、私は、

絶対にママを渡さない!!