子供の姿のいずみさんが、親子ほどにも見える闇の天使のたくましい胸に飛び込んでいく。

闇の天使…いや、神紫貴はいずみさんを軽々と抱き上げ、想いを込めるように瞳を閉じた。

その時わたしは感じた。

月の女神カナンのために恋を禁じられていた二人の想いは、今やっと通じたのだと。

胸の奥深くに秘めていた想いは、長い間離れ離れになっても、どんな姿になっても、変わることはなかった。

彼らは……「永遠の恋」を手に入れたんだ。



―――たとえこの先、どんな神の制裁が待っていようと。



「…リアナ。オレといずみがこのままカナンを預かろう。彼女はこのままでは目を覚ますことはない。ファントムの一族は、目を覚まさないカナンを手放し、君の能力を復活させようと動き出している」

「…わたしの…能力…?」

紫貴はいずみさんを肩の上に乗せ、眠り続けるママを見下ろし瞳を細めた。

「美月の能力…それは即ち、月の太古の力…だな?」

わたしの横にいたセイジュが割って入る。

それは、はっきりと確信しているかのような口調だった。

「そうだ。オレは人の過去が見える。彼女は、月の生命の原点だ。カナンよりも重い運命を背負った女神。全ての生命に、愛と命を与える女神。何人たりとも彼女に触れることは許されなかった」