「寝ちゃったのかな?」

さらに15分ほど歩いたところで、セイジュの背中でいずみさんが寝息をたてているのに気づいた。

「…らしいな。ったく、威勢だけはいいけどやっぱり子供だな」

呆れたように微笑むセイジュ。

「わたし、いずみさん好きよ。普段は怖いところもあるけど、それはママや愛する人を護るためのものだってわかるもの。きっと使命のためにたくさんつらい想いをしてきたはずだから」

セイジュの顔がすっと真顔に戻る。

「…そうだな。彼女は恋することも禁じられていたはずだ」

カチャン、と頭の中でなにかのタガがはずれるような音がした。

……恋することを禁じられて?

遊園地でレンが言っていた言葉が甦る。

『…想いだした?リアナ。君が、恋を禁じられていたことを』

リアナ。

それがわたしの前世での名前だとしたら。

―――――わたしは、恋を禁じられていた………!!

じゃあ、今のわたしは?

わたしは、生まれてこのかた恋をした覚えがない。

パパとママみたいな恋に憧れているのに、誰かを好きになったことなんて一度もなかった。

拓ちゃんの気持ちにも応えられずに。

本当の恋なんて、何一つ、知らない。