数時間後、わたしたちはセイジュのお父さんの家を出た。

集落の中はいまだにしんと静まり返っていて、誰一人出てはこなかった。

「よそ者を警戒しているんだ。彼らはファントムの襲撃を恐れているからね」

セイジュの蒼の髪はファントムの特徴でもあるらしく、彼らは特に蒼の髪を恐れているらしかった。

「行こう。蒼の神殿はここから1時間も歩けば着く」

あと1時間。

それでママに逢える――――――!!!


集落を出て15分ほど歩くと、いずみさんが草原の上にぺたりと座りこんだ。

「……疲れた」

「いずみさん、大丈夫?」

いずみさんが子供がふてくされたような顔で頬を膨らませる。

「やっぱり心は大人でも体は子供ね。もう無理みたい。少し休ませて」

いずみさんが腰を落ちつけようとしたその時、セイジュは彼女に近づくと軽々とおんぶした。

「…セイジュ」

「お姫様。蒼の神殿までご案内しますよ」

おぶわれて、いずみさんは照れたように口をすぼめた。

「……ふふふ」

その姿がおかしくて思わず笑ってしまう。

「…美月、何がおかしいんだ?」

「だって、いずみさんの方が年上なのに、父と娘みたいなんだもん」

「バカ。変な想像するな」

そう言ったセイジュの顔も照れていてなんだかかわいかった。