桜-sakura-



『ん…!?これまさか…そんなバカな話あるわけない』


今、私がいる場所はどう観ても

自分の住んでいる世界とは思えなかった。

並んだ軒先、綺麗な桜、人々の格好。


何から何までわからない。


ここは?


確か、ってあの日見た夢と何もかも一緒。



桜の木があって

そこに佇むようにいたのが



『蓮…』



勝手に出てきた言葉は


あの時の記憶を蘇えらせる。


あの時もここにいて、

その後私は知らない連中に声をかけられ

困っていたところを


助けられる。



『蓮っ!!』



いるわけないと思って大声で呼ぶ愛しい人の名前。



『桜?』


あの優しい声がした。