『凌央くん、おはよう』
『おはようございます』
笑顔で病室に入ってきたママさんに挨拶を返した。
『一晩、一緒にいてくれたの…?』
『はい、一応。いつ目覚ますか分かんないんで』
『迷惑、かけてばっかね…。ごめんなさいね』
『いいんです。里衣はいつも大切なコトを俺に気付かせてくれるっていうか…
まぢで感謝してるんです。
だから、せめてもの恩返しです』
ママさんは優しく笑った。
『早く、目が覚めるといいわ。
あ、私、里衣の着替えを持ってくるわね。
里衣をお願いね』
ママさんはまた病室を出ていった。
俺は里衣の頭を撫でた。
『皆、里衣が目覚ますのを待ってるよ』
独り言のように、里衣に語りかける。
その時、里衣の瞼がかすかに動いた。
『里衣…!?』
動いてる。
里衣の瞼がゆっくりと、でも確かに開いていく。
大きい瞳が俺を見つめた。
『里衣…やっと目覚ましたな』
里衣はキョロキョロと目を動かした。
『今、先生呼んでくるからな』
俺は先生を呼びに一度病室を出た。

