−凌央side−
二人の明日は、もう来ない。
二人の当たり前は、非現実になる。
毎日、並んで歩いた通学路も
二人で作る思い出も
里衣の笑顔も
全て、俺の前から消えるんだ。
“俺も忘れるよ”
そんな、かっこいいこと言ったけど、無理に決まってる。
今まで、過ごしてきた時間は簡単に捨てられるような物じゃない。
俺にとっては、儚くて幻みたいな日々だった。
忘れられる訳ない。
ホントは伝えたいんだ。
里衣が好きだ。
自分でも、おかしいくらいに。
でも、その感情に勝るのは
里衣が笑ってくれない悲しさだった。
里衣が笑うなら、世界は明るくなる気がした。
でも、事故にあってからの里衣は前と同じように笑ってくれない。
原因は紛れもない俺だから。
俺は、遠くで見守るしかない。
それは、精一杯考えて出した答えだから。
なぁ、里衣…
俺を忘れても構わない。
だけど、ほんの少しでいい。
記憶の片隅に…
俺を残して。