『送ってく』





凌央はそれだけ言うと、立ち上がった。





『一人で、帰れるよ…』





もう、凌央に迷惑をかけたくない。



でも、凌央は送ってくと言い張るから甘えるしかなかった。





二人とも、何も話さない。




伝えたいことは、たくさんある。


謝罪も、感謝も…



だけど、何も言えなかった。




凌央の背中があまりにも小さくて切なく見えたから。




“ごめんなさい”




心の中で何度も何度も繰り返した。




家の前に着くと、凌央はもう一度あたしの頭をなでた。





『じゃぁな…』





そう切なく笑う凌央に、あたしは何も言えなかった。





どんどん後ろ姿が小さくなっていく。




もう、凌央は振り返らない。




二人の明日は、もう来ない。