記憶の片隅に





あぁ、あたしの初恋は終わったんだって。


そう思った。


でも、思ってた時間が長すぎたから簡単に忘れられなくて…


おにぃに一瞬でも大切にされたんだって。


あの時の想い出を消したくても、体が覚えてるの。


もう、過ぎた過去は消せない。

誰にも言えない恋なんか、しない方がマシだったのかもしれない…。


そういうのとか、全部忘れるために表ではいつも明るい立ち位置にいるようにした。


学級委員やったのも、それが理由。


いつも笑って、元気で…

そうやって、一生懸命忘れようとしたの。



でも……


やっぱ、辛い……。



ごめんね。


こんな話聞かせて…


軽蔑していいよ。


最低な話だから…』







『軽蔑なんかしないよ。

それくらい、好きだったんだろ?
兄貴のコトを。


俺は、まだよく分からないけどさ…

そういうのって良いと思う。


自分以外の誰かをそんなに大切に思えるなんてさ』






『…凌央』






『ずっと、辛かったんだろ。

一人で抱え込んでたんだろ…?


もう、下ろせよ。

一人で背負ってた物、全部さ。


そしたら、きっと忘れられる日が来るだろ』






里衣はいつの間にか、涙を流していた。




『……う…ん』





しゃくりあげながら、里衣はゆっくりと頷いた。