二人で休みながら四階まで立て看を一生懸命運んだ。
9月初旬はまだ、暑さが残る。
二人とも、汗だくだった。
立て看に白いペンキを塗っていく。
去年のデザインが消えて、真っ白になっていった。
『…あたしも、こんな風に真っ白に塗りつぶしてほしいな』
何気なく、里衣が呟いた。
『……え?』
『嫌な過去とか、現実とか…全部きれいな白を重ね塗りして消してほしい。
きれいな過去に塗り替えたい』
『…里衣』
中1の俺には、里衣の言うことが何となくしか分からなかった。
『…凌央、話してもいい?
あたしのコト…』
『…うん』
里衣は白いペンキを塗りながら話した。
『あたし、ママとパパが小さい時に離婚したの。
二人とも優しかったし、仲がよかった。
けど、あたしのパパはホントのパパじゃなかった。
ママは結婚しないであたしを生んだんだって。
それで、パパと出会った。
パパにも連れ子がいたの。
あたしより、3歳上の男の子で…
あたしはおにぃって慕ってた。
血が繋がってないコトはちゃんと分かってた。
分かってたから、いけなかった。

