記憶の片隅に






『でも…!』





『ホントは逃げだったの。

凌央の近くにいるのは、辛すぎたから。


でも、今は違う気がする。

世の中は、何事もタイミングが大事でしょ??


今しかないの。


あたしが、こんな大きなコトに挑戦できるのは。

空っぽになった、今しかない。


それに、あたしの記憶は頼れない。

大事なコト、ぜーんぶ忘れちゃうような頭なの。



だから、この時間を。

感じたコトを、

見たコトを、

聴いたコトを、


ちゃんとしまっておきたい。



空っぽから、どんどん詰めこんで、ゼロからやり直すの。


頭の引き出しをどんどん増やしてく。

知識も、気持ちも、恋も、全部。


その引き出しに、きっと、もう凌央はいないから。


もう、ホントにさよならだから』