『中島凌央。 君は…』





『―磯島里衣』




やっぱり。




声をかけた時から、そんな気はしていたんだ。




噂によれば、いつも明るくて笑顔で…。




けど、その裏側には暗い何かがあった。



俺はそれを知ってしまった。





『中島凌央くん、何て呼べばいい?』




『凌央でいいよ。女子も男子も皆そう呼ぶし』





『凌央…ね。あたしは里衣でいいよ。呼びやすいでしょ』





『分かった』





『…変なとこ見せちゃったよね。
ホントにごめん。

忘れてほしい…』






『忘れないよ。また、何かあったら俺に言えばいい。

大人には言えないんだろ。

俺は何もできないけど、話聞くことくらいならできるから』






『…凌央、ありがと。

あ、これもらってくれる?』





里衣はペンで俺の手にメアドを書いた。




『待ってるね』





『夜、メールする』





俺は、そう言って屋上から下りた。



グランドに戻ると、休憩時間は30分過ぎていて顧問にこってりしぼられた。





そんなこともどうでもよくなっていた。




里衣の顔が頭から離れなくて、辛い思いをしてるなら俺がどうにかしてやりたいと思った。




ついこないだまで、恋とか全く理解できなかったのに…




今、分かった気がした。




これが恋なんだと。




俺は里衣に恋をしたんだと。