5月の上旬頃。
だんだん、暑くなり始めてきた。
その日は、たまたま真夏日を越えていた。
サッカー部はどの部活よりも練習がきつい。
でも、サッカーが好きだから俺は頑張れていた。
さすがに、外でずっと部活をやるのはしんどかった。
顧問の機嫌が良かったみたいで、一時間の休憩をくれた。
俺は一番、涼しそうな場所、屋上に向かった。
屋上の扉を開けると、風が吹き抜けて気持ちがよかった。
フェンスによりかかって、スポドリを飲んだ。
何気なく、屋上の端の方に目をやると人影があった。
シルエットが女子っぽかった。
その影は、ずっとフェンスごしに遠くを見ている。
何となく気になって、横目で見ているとその影がいきなりしゃがみこんだ。
俺はこの暑さで貧血にでもなったのかと思い、心配になってその人に近づいて声をかけた。
『…あの、大丈夫っすか?』
その女の子は、ゆっくりと俺に振り返った。
俺は、自分の心臓が跳ねるのを感じた。
単純に、かわいいと思った。
大きな目を真ん丸にして、俺をまっすぐに見つめる。
生まれて初めて感じた気持ちだった。